アメリカのクリスマス その1 メリークリスマスは言わない?

12月に入ったので、クリスマスの話題を。
独り身の僕にとって、クリスマスはそれほど楽しいものではない。それでも街中の夜がライトアップされたり、華やかなクリスマスソングが巷に流れるのは冬の風物詩として悪くないと思っている。
  

今更、クリスマスがイエスキリストの降誕を祝う日だとか言うのも野暮だと思うけど、僕の家はクリスチャン家庭だったので、子供の頃からクリスマスとは縁深かった。実際のキリスト教のクリスマスはそれほど派手なものではなく、教会で賛美歌を歌い静かにお祝いするものだった。子供心に「どうしてキリスト教でもないのに世間の人達はお祝いしてるんだろう?」なんて思ったりしたけど、結局、その後ひねくれてしまって、洗礼を受ける事もなく教会から遠ざかってしまった。まあ、そのいきさつはいつかするとして、クリスマスだ。
日本のクリスマスは、いわばアメリカ流の歳末大売り出しの戦略が導入されて以来、今に至ったものだろう。バレンタインデーと全く同じ。デパートや企業が率先して僕らにメリークリスマス!を浸透させていったわけだ。こうしてクリスマスは子供達にとって、誕生日以外にプレゼントを貰える大事なイベントになったんだけど、特にバブル以降は恋人達にとっても重要になってきたように思う。ここから日本独特なんだけど、LOVEを強調した宣伝が増えたり、高級スイートに予約をとってクリスマスを過ごすなんて話は、この頃からよく聞くようになった。変な話、世界中で日本人ほど、クリスマスの夜に×××に精をだしている国民はないそうだよ。だって聖なる夜に×××は不謹慎でしょ?(笑)
  

それじゃ、本家本元アメリカのクリスマスとはどんな日なんだろう?アメリカは統計上ではキリスト教の信者が80%近くいることになっている。当然、宗教色が強くなるのかと思いきや、そうは単純ではないみたい。アメリカのクリスマス事情を書いていこう。(尚、アメリカの情報は映画評論家の町山智浩氏の話を参考にしてます。)
アメリカのクリスマスを語るとき、それはアメリカの歴史を語ることになってしまう。なので思い切りザックリいくよ。はしょるよ。
もともとアメリカのクリスマスは、イギリス系の移民がアメリカ大陸に入ってきたところから始まる。彼らは本国から異端として迫害されてきた(ピューリタンと呼ばれる)キリスト教信者だ。日本で言えば、オウム真理教上九一色村サティアンを作ったのと似てる。ちょっと語弊があるか。その頃は僕が知っているようなおごそかなクリスマスだった。よく映画とかで、主人公がクリスマス休暇に実家へ帰るシーンがあるでしょ?観たことない?本来クリスマスというのは家族で過ごす時なのだ。その時ばかりは恋人とも離れて暮らす。日本とは大違いでしょ?一緒に過ごす時は家族になることを意味してるんだよね。フィアンセを親に紹介するシーンって、クリスマスだったりするでしょ?
その後、サンタやトナカイ、もみの木といったアイテムはオランダ・ドイツ系のキリスト教移民によってもたらされる。なるほど。いかにも北欧テイストが強いものばかりだ。もみの木なんてアメリカにはなかったし、トナカイは北欧に生息する動物だからね。やがて、それに目を付けたのが、大手デパートの連中だ。このイメージを使って商売をしようとしたのだ。現在のサンタのスタイルはもともと赤白の服で白ひげ面と決まっていたわけじゃなかったらしい。それを決定付けたのはこれ。

コカコーラの赤白のイメージを大々的に売り出そうと、街中にこのポスターが貼っていったそうな。サンタのイメージはこれで決定したのだ。夏の定番、コークを冬にも展開したかったのね。
それ以降、サンタクロースが歳末大売り出しのキャンペーンマスコットになっていく。アメリカの映画とかでこんなシーン見たことありません?

この人。デパートに雇われたアルバイトサンタさん。クリスマスになるとデパートの一角で、子供を膝にのせてこう尋ねます。
「坊や(お嬢ちゃん)が欲しいものはなんだい?言ってごらん?」
子供は本物のサンタって思い込んでるから正直に話します。それを親が陰から盗み聞きするか、もしくは後でこっそりサンタに教えてもらってからデパートでプレゼントを購入する流れ。日本ではそうでもないけど、親に欲しいものを話したら夢が叶わないって話あるでしょ?あれってデパートの陰謀だよ。欲しいものをデパートで買わせるためのね。そしてクリスマスの日、子供が目を覚めるとクリスマスプレゼントが置かれている。子供はおおはしゃぎで親の元へ行く。
「パパ、ママ!サンタさんからのクリスマスプレゼント届いたよ。」
親はまあ!という顔をして微笑む「どんなものを頂いたの?」
子供はワクワクしながら包装紙を破くと「わあー!サンタさん約束守ってくれたんだね」と満面の笑み
親も一緒に驚いて「良かったわねえ。サンタさんて本当にいるのね」
なんて観た事のある会話がアメリカ中で行われるわけだ。
とにかく現在のアメリカにはそのシステムが確立されているらしい。なかには、欲しいものを言わない子供もいるらしく、それを聞き出すカリスマサンタってのもいるらしいよ。子供の心を開かせる名人なんだろうけど、商売が背後にあるからねえ。どうなんだろう。とにかくアメリカ人はそこまでしてサンタクロースの存在を守ろうとする。どうしてなのか?それは次回に触れる。しかしこのシステム、ちょっと怖い気がしない?だって子供がサンタに何をお願いするか心配でしょ?途方もなく高額なものとか言ったりしないのかな?その辺はちゃんとサンタがうまく調整してくれるのだろうか?事前に予算とかサンタに話しておくのかな?まあ、いいか、その辺は・・・でも日本ではそのシステムはあまり浸透しなかったよね。僕もサンタの膝に乗った記憶はないし、普通にアレ欲しいコレ欲しいって親に言ってたような気がする。日本人じゃサンタになれる役者が足りないってことなのかな?
ところで、現在アメリカではメリークリスマスという言葉はあまり使われないそうだ。少なくともメディアでは代わりに「ハッピーホリデーズ!」という言葉を使うらしい。ブッシュ大統領(コテコテのキリスト教徒だけどね)も年末の記者会見でそう言ったそうだ。
   
アメリカ人の中には当然、キリスト教じゃない人も含まれる。中でもユダヤ人はイエス・キリストを否定している立場の人達だ。ざっくりいくよ。
聖書には旧約聖書新約聖書の二つがあること知ってるかな?旧約はキリスト誕生以前、新約は以降を書いてるものだと思ってちょうだい。ユダヤ人の信じるユダヤ教はこの旧約聖書のみを信じている宗教。キリスト教は旧約も含め新約も信じている宗教なのだ。いわば、兄弟みたいな存在なんだけど、ユダヤ教イエス・キリストを神の子とは一切認めてないので新約聖書に書かれてることは完全否定。彼らにとってキリストは麻原彰晃みたいな存在でしかないのだ。だからキリストの誕生をお祝いするなんてありえないこと。かたや、キリスト教はキリストを十字架にはり付けたのはユダヤ人達だと思っているので、ユダヤ人を毛嫌いしていたりする。もともと同じ神を信じているのに、憎み合ってるんだから世話ない。ついでに書くとイスラム教も、もとは同じだったりするんだけど、これは別の話。
こんなことになってるので、当然、ユダヤ人からメリークリスマスに反発があるのは当然。ユダヤ人って人口比にすれば、せいぜい1〜2%なんだけど、結構有力者が多い事でも有名。金融、メディア、ハリウッド映画はユダヤ人が牛耳っているともいわれるくらいなのだ。そんな彼らが声を上げれば、配慮せざるをえないのだろう。ユダヤ人にもハヌカという年末のお祭りがあるらしいんだけど、みんなと一緒に楽しくクリスマスを過ごしたいのだ。そうしてハッピーホリデーズと言い換えられるようになっていったんだそうだ。クリスマスツリーさえ、ハッピーツリーと呼ぶこともあるらしい。最近ではそれはやりすぎだということで、メリークリスマスの復権運動が起こってるそうだけど・・・まあ、日本人にはどうでもいいというか、ピンとこない話だ。
今回はこれくらいにして、次回はアメリカのクリスマスのテレビ事情から見るクリスマスの精神について書きたいと思います。