美味いもんって何だ! 3 人は何故食べるのか?

ブログで前に取り上げた「できそこないの男たち」の著者・福岡伸一氏が、ラジオで「食について」話していた。その内容は大ベストセラー「生物と無生物の間」にも書かれているんだけど、ラジオ向けに解りやすく面白く語っていたので、そちらの話を紹介したいと思う。
人は何故食べるのだろうか? 
普通なら「食べ物は生きるための栄養源であり、いわば車とガソリンの関係のようなもの」といった感じ?
もちろん、その側面もあるんだけど、生物学的には30点の答えらしい。もう一つ、忘れてはならない重要な側面があるというのだ。
70年前 シェーンハイマーという科学者が、ある画期的な実験を行った。テーマは「食べたものは身体の中のどこへ行くのか?」
 Rudolf Schoenheimer (1898–1941)
食べ物というのは小さな分子(アミノ酸 糖 脂肪など)で構成されている。彼はその分子(アミノ酸)に色(マーカー)をつけて、それがどこへ行くのか時間を追って観察したのだ。もちろん、人体実験するわけにはいかないので、成熟した大人のマウスを使った。
事前の予想は僕らが考えているのと同じようなことだった。
子供のマウスなら、成長の過程にあるのだから、当然摂取したアミノ酸は身体の一部に組み込まれてしまう。大人であればそれ以上大きくなる必要がないので、摂取したアミノ酸は生命維持のためのエネルギーとしてすぐに燃やされ、その燃えカスは全て尿や糞として排出されるに違いない。
ところが実際は違っていた。
摂取されたアミノ酸は身体の部位(尾、骨、各臓器、目、etc)全てに散らばっていき、それぞれ溶け込んで部位の一部になっていった。尿や糞から排出された分子は投入されたわずか30%に過ぎず、それ以外は身体にとどまったことになる。しかしその分だけ、体重は増えるべきなのに全く変化がなかったのだ。
これが何を意味するのか?
新しい分子を取り込むと同時に、身体中の古い分子が壊されていくのだ。いわば交換作業を行っていることになる。車に例えれば、取り込まれたガソリンが、すぐにネジなどの部品に変身して、古いものと即時交換をしているようなものだ。
役目を終えた古い分子は尿や糞から排出される。そうやって、生物は毎日新しい身体になり、全ての細胞が入れ替わっていくのだ。新陳代謝や怪我が直るのもそういうことだ。そうして生物は常に身体のメンテナンスを行っている。その流れを止めないことが、食べるという行為なのだ。
マンションなどの建物は初めからがっちり作られてるので、メンテは10年に一度行えばいい。車も2〜3年で車検を行う。生物は常に不安定なのでメンテを毎日せっせとやってるんだな。ちなみに、取り込まれた分子がとどまる期間は、約3週間だという。つまり、3週間後は全く違う自分になっていることになる。そういえば一ヶ月間マックを食べ続けるという実験映画があった。
スーパー・サイズ・ミー

3週間後、マックの食事だけで構成された身体になってるわけだ。怖い。当然、結果は大変なことになってしまいますよ。
なんとなく意識変わりません?今までは何を食べても、どうせエネルギーとして燃やされるだけで、後は排泄するだけというイメージがあったわけだけど、毎日、食べたものが全て身体の一部となり、メンテをしてるとなると、なるべくいい分子を取り込みたくなるよね。極力ジャンクフードは避けたくなるし、悪い添加物も取り込みたくない。バランスのいい食事を心掛けようとか。
最後に、よく女性がお肌の張りと艶を取り戻すためにコラーゲンを取り入れることにも触れていました。ほとんどそれって意味がないそうですよ。つまりこういうこと。身体に入った食物は一度細かい分子に分けられます。そしてそれぞれ必要な分子となり、全身の部位に散らばっていく。そんなに都合良く、コラーゲンがコラーゲンのままで、肌だけに影響を与えるというのは幻想であって、実際はありえないのだ。
  
プラセボ効果って聞いたことありますか?偽薬を処方しても、薬だと信じ込む事によって何らかの改善がみられる事を言うんだけど、それくらいの効果は期待できるかもしれないと言ってました。スッポン鍋を食べた後の翌日「なんか肌に張りが出てる感じがする」なんて思うのは、まさにそれ。
もう一つ、サプリメントも同様に、たいして意味がないそうだ。

そもそもビタミンが欠乏したくらいで、病院に担ぎ込まれるなんてことありますか?
人は歴史的にみても、常にビタミンの欠乏と不足にさらされてきたはず。それが現代のような飽食の時代になり、逆に不足への恐怖を持つようになってしまったのだ。まあ、バランスをとれた食事、プロセスがある程度見える食材をとれていれば、全然問題ないんだけどね。色々偏りが出てきてしまうので、健康への不安も募ってしまうのも無理はない。今回はこれまで。