美味いもんって何だ! 4 食のBlack Boxを映画から探る

去年から今年に掛けて産地偽装、食品偽装など「食」にまつわる信頼関係を壊すような出来事が相次いだ。
   

僕は、こんなことは昔から当たり前にあったことだと思っている。今の人間がとりわけ邪悪なわけではなく、単に内部告発するような社会環境になったということではないかな?それって常識かもしれないけど、人間はそういうものだと思っていた方がいい。性善説に立って無条件に放置してしまうと、ほぼ確実に水は汚れていってしまう。そうならないためのシステムを用意することで、なんとか人は善を保っていられるのだと思う。会社がよく配置転換するのもそういうことでしょ?随分悲観的な事言ってるかもしれないけど、結局、自分は他人を批判するほど清廉潔白なのか?と自問すればそうならざるをえない。もちろん、僕なりにそうありたいと思っていても、悪魔の誘惑に確実に勝てる自信なんてないからね。(誘惑=お金の問題だけでなく、ズルをしたり、いい加減なことしたり、そういうのも含む)
年金問題とかで役所の人も叩かれるけど(公的役職の人は嫌われる覚悟はするしかないんだけど)、そもそも年金の管理システムに不備があったのが問題。穴ぼこだらけの制度を目の当たりにした時、人は誘惑と戦うハメになる。道端で財布を拾うようなものだ。そのまま懐に入れるか、警察に届けるか、迷いが全くなければ、それも人間味がないというものだ。(もちろん結果的に勝つ人がほとんどだと信じたい。でもなかには負けてしまう人もいるのが現実じゃないかな?)
僕らの「食生活」は数知れぬ信頼の上に成り立っている。いちいち疑っていたら、何も食べれなくなってしまう。それだけプロセスの見えないものを食していることになる。食の生産から口に入るまでのプロセスがある程度見えていた時代もあった。肉は肉屋で、野菜は八百屋で、まだ売る人の顔が見えていたよね。それがスーパーの時代となり、顔が見えなくなってラベルの表示だけが頼りになった。(数年前まではそれもいいい加減なものだった。法律が改善されてある程度信頼出来るものになってきた)伊丹十三の映画スーパーの女を観れば、その辺がよく解ると思う。

ここから、そのブラックボックスの中を覗き見していこうと思う。まずは、かつてNHKで歴史的なドキュメンタリーが放映された。「人間は何を食べてきたか」というシリーズだ。(1985年〜1994年放送)
人間は何を食べてきたか 第1巻 [DVD]

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放送の第一回目は「肉」編。ドイツを舞台に、何故「肉」の食文化が広がっていったのかを取材レポートしていた。かつてドイツの土地は痩せていたらしく、小麦などを作る環境にはなかったという。そこで仕方なく肉を食べるようになったのだ。やがて肉を保存食にするため「ソーセージ」などが生まれていった。本編の中で、生きた豚を一匹まるごと解体してソーセージなどの加工品を作る過程を描いたシーンがある。(パッケージに映ってるシーン)それはなかなか衝撃的なものだった。よくこれをテレビでやったものだと思う。この頃はNHKも気概があったね。とりわけ印象的なのは、解体するおじさんの淡々と作業をこなす様子と、それを当たり前のように眺めている少女の姿だ。それは彼らにとって日常なのだ。そうやって食物と向き合っている。気持ち悪さより、すがすがしさを感じてしまったね。(豚は骨と皮以外、全て食用になるのだ.)僕らはそんな過程を全く知らず、ただ肉の切り身が前に置かれるのみ。自分の生を得るため、別の生を殺している現実など直視しなくてすむのだ。日本は世界で一番食べ物を捨てる国だという。みんなこれを観るべきなんじゃないの?って思うよ。
最近の作品で一番に紹介したいのは、いのちの食べかた今年、大変話題になった食に関するドキュメンタリーだ。とりあえず予告編をご覧あれ。これだけでも衝撃的な内容が伝わってくる。

いのちの食べかた
 
内容
人々の生活とは切り離せない「食物」の生み出される現場を捉えた食育ドキュメンタリー。野菜や果物はもちろん、家畜や魚までもが効率的に生産・管理され、人間のための食物へと姿を変えていく姿をありのままに淡々と映し出していく。

実は僕もこの映画はまだ観ていない。DVDは発売されたがレンタルは2月以降、買うまでもないのでその時までおあずけだ。この映画はR12指定になっている。予告編観るだけでも何となく解るような気がする。僕が親でも「これを観て、子供が食べ物を口にできなくなってしまったら困る」と考えてしまうかな。宣伝コピーで「この映画は食材のレシピだ」と書いてあったが、まさしく食材がいかにオートメーション化されているかを描いている。この映画の凄い所は全く説明のナレーションが入らないことだという。とにかく映像で、ズバズバとありのままを見せて何かを感じてもらおうという演出になっているのだ。だから批判映画になってない。(もちろん、編集がある以上、作家の意図がないというのは嘘になるが)感じるのはこっち次第というわけだ。僕はその姿勢を正しいと思ってしまう。何故なら、僕らは大量消費の時代で、それを否定などしたら生きていけないからだ。それでも、食との向き合い方は変わるかもしれない。中学生とか学校でこの映画を上映したらいいと思う。皆のこころにざわめきが生まれ、何かを考えるきっかけになるかもしれない。

ファーストフード・ネイション
 
内容
ジャーナリストのエリック・シュローサーのノンフィクション書籍を原作に、リチャード・リンクレイター監督が映画化、2006年カンヌ国際映画祭で賛否両論を巻き起こした話題作。“食の安全”をテーマに、アメリカのファーストフード業界の内幕を暴く。

こっちはドラマだ。「ミッキーズ」って会社になってるけど、これって「マック」のことだよね?だから人事じゃありません。予告編の最後で落としたパテを拾って焼くシーンがあって「焼いてしまえば安全だ」という台詞が被ります。確かにそうかもしれない。たいがいの菌は熱処理されるだろう。でも消費者は何も「安全」だけのためにお金を払ってるわけじゃない。「信頼」という契約も結んでいるのだ。日本で告発された企業やお店は、その「信頼」という契約を軽視してしまった事に他ならない。ちなみにこの映画はニコニコ動画でも観れます。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4551511

おいしいコーヒーの真実
 
内容
世界市場において石油に次ぐ巨大貿易商品であるコーヒー、その知られざる真実に迫ったドキュメンタリー。コーヒーが消費者に届くまでの道のりを紐解きながら、貧困に喘ぐコーヒー農家の人々の暮らしを救うべく立ち上がったひとりの男の姿を捉える。

この映画も観ていないので多くは語れない。早急に借りて観たいけど、このDVDってどこにでも置いてないような気がするな。予告編を見てもらえば判ると思うけど、この映画はいかに大企業が貧困な人達から搾取しているかを描いている。そのやり玉に挙がってるのがスターバックスだ。僕自身、スターバックスにはほとんど入ったことがない。やっぱり値段が高いと思う。どこかで何様だよ!って思いがあるんだね。スターバックスと貧困なコーヒー豆農家を対比させることで、問題意識が浮かび上がってくるのだろう。そしてそれはおそらくコーヒーに限らない。金持ちは増々儲けて、貧乏は更に追いつめられていく。もはや、神なんていないよ。そんな事を黙っている神なんて神じゃないと思うしかない。
最後にもう一本紹介したいのが、ダーウィンの悪夢というドキュメンタリーだ。

でもこれを書き出すと長くなるので、明日に回したいと思う。実はこの映画、賛否両論別れる問題作。両方の意見を踏まえた上で、なるべく整理してお伝えします。それでは