「イスラエルのガザ侵攻」ってどういうこと? その2 イスラエル建国〜現在 

前回の続き。かくして2000年の時を経て再びイスラエルが建国されることになったんだけど、そこには当然、パレスチナ人が住み着いちゃってるよね。追い出すわけにもいかないので、国連はその土地を二つに分割することを提案した。ユダヤ人の国とパレスチナ人の国を造るのでお互いうまくやりなさい」ってな感じで・・・まあ、勝手な言い草だと思うよ。そこで示されたのが左下の地図。緑がユダヤ人の領土。赤がパレスチナ人の領土。あれ?これおかしいよね。明らかにユダヤの領土がでかい。当時はユダヤ人の数はパレスチナ人より圧倒的に少なかったのに・・・(ユダヤ70万・パレスチナ130万)
これは不公平でしょ?パレスチナ人だけじゃなくアラブ人も全員「ふざけんじゃねえ!」って怒りに震えたと思うよ。一方、ユダヤ人は大喜びかと思いきや、浮かない顔なんだよね。なんと欲深い・・理由はただ一つ。自分たちの領土にエルサレムが含まれてなかったからだ。(右下の地図で場所確認してね)
1947年当時の分割案  中央の白い部分がエルサレム
さて新しいキーワードエルサレムのことを書かないわけにいかない。エルサレムユダヤ教イスラム教、キリスト教にとって重要な聖地なのだ。ユダヤにとっては、かつての王国の首都であり、ユダヤ教の象徴エルサレム神殿のある場所。アラブ人にとってはイスラム教の創始者ムハンマド(モハメット)が旅立ったという伝説を残す岩のドームがあり、キリスト教にとってはエスキリストが十字架に掛けられた場所なのだ。それぞれが違う理由なんだけど、聖地である以上、争奪合戦になるのは当然かもしれない。
エルサレムの全景 
イスラエルが独立を宣言(1948年)すると、翌日には、ユダヤ人VSアラブ人の全面戦争へ突入した。でも、これってどう考えてもイスラエルに勝算あるとは思えないよね。数が余りにも違うでしょ。(アラブ人15万・ユダヤ人3万)実際、最初はアラブ連合が優勢だった。でも次第にアラブの内部分裂が起こったり、イスラエルが軍備を整えていくうちに形成は逆転していく。ユダヤ人は欧米の軍に所属していた兵士が多く、近代戦の闘い方を熟知してたんだね。特に優秀なパイロットを抱えていたので空中戦はお手の物。完全に制空権を握ったのだ。こうなったらイスラエルの勢いは止まらない。上の地図で示されたエリアよりも多くの地域を征圧してしまったのだ。かろうじてガザはエジプトが死守。ヨルダン川の領域をヨルダンが死守し、それぞれが領土とする事で一時停戦する運びになった。地図は下の通りになってしまった。分割案と見比べてね。
    難民達の姿
明らかにイスラエルの領土が拡大されてるよね。なんのために戦争しかけたのか?アラブ人面目丸つぶれ。パレスチナ人は同じアラブ人のいるガザとヨルダンの地域に命からがら逃げ込むハメになってしまった。この時から彼らをパレスチナ難民と呼ぶようになったのだ。パレスチナ人は踏んだり蹴ったり。国を建設するはずだったのに、自分の領土を全て失ってしまった上に、家財や資産も没収されることにもなったのだから。これは恨むよね。アラブ人もこのまま黙ってるわけにいかない。小競り合いはずっと続き、4回戦争が行われたんだけど、結局アラブ人にはどうすることもできなかった。それどころか、ガザとヨルダン地域までもイスラエルに取られるはめになってしまった。もうアラブ人お手上げ状態。この争いからとうとう手を退いてしまった。パレスチナ人はがっかりだよ。もうアラブ諸国に頼れなくなってしまったのだから・・
そこで登場するのが、PLOパレスチナ解放機構)。パレスチナ人が抵抗組織を自ら作ったのだ。当初、PLOユダヤ人を海に突き落とせ」という反ユダヤ主義のスローガンを挙げるテロ集団みたいな存在だった。実際イスラエルに対しテロ攻撃を行っていたんだけど、当然それでは埒が開かないこともあって、次第に方向転換を計るようになりイスラエルと共存するヨルダン川西岸地区およびガザ地区でのパレスチナ国家建設」と打ち出すようになっていった。この時のPLOの責任者が有名なアラファト議長だ。
 アラファト議長  ラビン イスラエル首相 オスロ合意

そして1993年、イスラエル政府と秘密交渉を行い、ガザ地区・西岸地区におけるパレスチナ人の暫定自治を定めたオスロ合意にこぎつけたのだった。こうしてガザ地区と西岸地区からイスラエルは段階的に出て行く事になり、その地はパレスチナ自治区と呼ばれるようになった。事実上のパレスチナ国家承認だ。二人はその功績によってノーベル平和賞を受賞した。めでたしめでたし。

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って訳にいかないことは皆さんも知っての通り。その後、今度はパレスチナに内部抗争が勃発するんだよな。全く懲りないというかなんというか・・・この和平に不満を持つグループが台頭してきたのだ。それが今、話題のハマスPLOファタハという政治グループ(アラファトもそうだった)が主流となって実権を握っていたんだけど、政治を任されると、次第に汚職や人権侵害などするようになり、パレスチナ人の反感を買うようになったのだ。全く人間というのは愚かとしか言いようがないね。ハマスはそんな状況の中、ガザに誕生した。彼らは職業訓練や病院の経営などの慈善活動を通して,住民の支持を広げていき、イスラエルに対しては徹底抗戦の態度を示した。そして議会で過半数以上の議席を獲得し、政治的実権を握ってしまうのだ。
ハマスの兵士 タリバンの兵士 ハマスタリバンのような組織でないことを願う。
彼らってイスラム原理主義寄りなんだよね。だとすれば僕はアフガニスタンタリバン政権を連想してしまう。初めタリバンは民衆に支持されていたんだけど、権力を握ると酷い圧政を行ったのだ。だからロクな事にはならないはずなんだけどね。とにかくハマスイスラエルに対し数々のテロ攻撃を行った。イスラエルも当然抵抗する。それ以降は、みなさんもニュースでご存知の通り。

この壁はイスラエルパレスチナ自治区の間に設けられた壁。ハマスの台頭以降、あまりにもパレスチナ人による自爆テロが横行したために、自由に出入りをできないようにイスラエルが設置したのだ。このため、パキスタン人は自治区内に閉じ込められてしまった。そして更にイスラエルはエネルギーの供給を止め、物資の流通もできないようにし、兵糧攻めにあわせたのだ。益々生活が苦しくなるパレスチナ人。ハマスはロケット弾をイスラエルに向けて撃ち続ける。イスラエルはとうとうガザに侵攻を開始した。
  
この映像はガザの現実を映し出している。日本のテレビでは見れない映像だ。もはや、日本のテレビは洗浄された情報を流すばかりで、真の姿を覆い隠すばかりだ。確かにショッキングな映像だが観る価値はあると思う。子供には見せない方がいいけどね。でも真実を知るには、テレビには期待できない。テレビがどれだけ事実の深刻さを漂白してるかがよく解ると思う。インターネットにはむき出しの映像と、有識者の優れたレポートが存在する。それらを駆使、選別しながら真実の姿を見極めるしかないんじゃないかな。
とにかく酷いことになっているのだ。1/07現在では死者600名負傷者2400名を越えたという。化学兵器白燐弾)も使って、ジェノサイド(大量虐殺)の限りをつくすイスラエル。ガザの市民は壁に囲まれているので逃げ場はなく、食料も絶たれているので飢えて死ぬ子供もいるという。イスラエルは大罪を犯した。歴史的に許されないことをやってしまったのだ。
でもこの争いには、欧米の姿が見え隠れしてることを忘れちゃいけないよね。中東戦争がこれだけ拡大したのはイスラエルに欧米が武器を供給し、アラブにはソ連がその役を担っていたからに他ならない。要するに米ソ冷戦の代理的側面が大きかったのだ。イスラエル核武装もし、巨大な軍事国家となってしまった。もはや誰にも止められない状況なのだ。今回のガザ侵攻に対し、世界は何もできない。イスラエルと友好関係にあるアメリカはイラク戦争の失敗と金融危機も重なって介入するはずもなく、欧米各国も同様に手を出せないだろう。現在、エジプトが仲介に入ろうとしているが、あまり期待できない。レバノンは交戦必至の様子。このまま放っておけば、また再びアラブを巻き込み、大戦争に発展するやもしれない。僕らはそれをただ注視するしかないのだ。
最後に。僕が書いた文はかなり事実をはしょった部分があります。他にも重要な事柄はいくつかあると思うので、詳しく知りたい人は自分で調べてね。それでは。