「イスラエルのガザ侵攻」ってどういうこと? その3 イスラエルの覚悟

世界の世論は「悪のイスラエル パレスチナの悲劇」一色になってるようだ。確かに現状においてイスラエルはやり過ぎの感がある。ほぼ一方的に砲弾の雨を降らし、危険な化学兵器も使用するなど、無差別に殺戮を続けているような印象を受ける。しかもガザ市民は逃げ場を失ったカゴの鳥。神に祈る他ない状況にあるのだ。実際こんなことがあったらしい。

「一族がまとまって住んでいるサムーニ家の住居にイスラエルの軍隊がやってきて、110人もの一族全員をひとつの建物の中へ避難するよう指示したが、その建物は翌日イスラエル軍によって砲撃された。」

事実なら、あまりにも非人道的な行為。もはやイスラエルの標的は「ハマス」にとどまらず、パレスチナ人の殲滅にあると思われても仕方ない。もう少しやり方がなかったのだろうか?これでは世界から非難を浴びるのも当然だ。もしこれを止めれるとするば、世界が一丸となってイスラエルに対し、何らかの圧力をかけるしかないんだけど、イスラエルはそんな事覚悟の上だろう。「やれるもんならやってみろ!」彼らはもういい加減に堪忍袋の緒が切れてるのだ。
 ナチスの鍵十字架がイスラエルの旗に・・・なんという皮肉
報道はどうしても弱者の上に立ってしまいがち。強者=悪、弱者=善というわけだ。でもそれは今回の場合、ぴったり当てはまらないと僕は思う。ナチスホロコーストみたいに、強者がただ一方的に弱者を虐殺したのではなく、パレスチナ側にも非があると言わざるを得ないからだ。世界各地で紛争は多発してるけど、その多くは民族間の対立がほとんど。虐殺は度々起こってるけど報道はあまりされない。恐らく圧倒的な強者がいないからじゃないか?って邪推もしたくなる。そんな判りやすい構図をマスコミは望んでいるのだろう。今回イスラエルは格好の餌食になったわけだけど、たいていの場合、戦争に善悪を持ち込むのは難しいんじゃないの?。何故ならどちら側にも「正義」が存在するからだ。
ここはあえてイスラエルの立場になって考えてみたいと思う。彼らにとってこの行動以外に選択の余地はなかった。「殲滅」あるのみ。あってはならないことだけど、そう考えるのも判らないでもないんだよね。
イスラエルは孤立した国だ。回りの国は全て自分たちを嫌っている連中ばかり。これってかなり戦々恐々となる状況のはず。これって危険レベルは全く違うけど日本にも当てはまる状況じゃない?だって中国、北朝鮮、韓国から嫌われてるからね。韓国なんて「竹島」、「対馬」という日本の領土を本気で奪おうとしているからね。

想像してみよう。もしそれが更にエスカレートして、北朝鮮あたりが頻繁にロケット弾とか、テポドンとかしょぼいながらも延々と攻撃してきたらどうだろう?アメリカが助けてくれるかと思いきや、何もしてくれなかったら?当然、僕らは政府に望むよね。「なんとかしろ!この攻撃をやめさせろ!」って叫ぶに違いない。
日本には軍隊がないから、当然話し合いしか手だてがない。だから交渉したいんだけど、相手は聞く耳を持たない。「日本人を殺せ!」の大合唱。それどころか中国や韓国も北朝鮮に援助している様子で、不穏な空気は更に高まっていく。そんな状況で対話で解決なんて無理に決まってるでしょ?僕らはその攻撃をただ見ているだけなの?何人も人が死ぬのを黙ってられるのかな?本土に侵攻してきたら簡単に明け渡してしまうの?政府が何もしてくれなかったら、当然失望するよね。イスラエルはそれと似たような状況にあったと思う。
話はオスロ合意に遡る。こっからは僕の想像というか創作。

クリントン アメリカ大統領
「このまま殺し合っててもしょうがないだろ?ここはさ、ラビン君、ガザ地区と西岸地区の自治をお試しでアラファト君に任せてみたらどうかね。」
ラビン イスラエル首相
「でも、こいつらちゃんと監視してないとさ。どうせまた調子に乗って良からぬ事考えるに決まってるからね。それは無理。」
アラファト PLO代表
「いや、君の言う事は判るよ。でも私たちに一度でいいからチャンスをくれないか?なんとか君たちユダヤ人と共存できるように努力するからさ」
クリントン アメリカ大統領
「世界がそれを望んでるんだ。私たちも協力するからさ。もしダメだったらアラファト君、判ってるよね。アメリカは君たちを守らないよ。」
アラファト PLO代表
「うーん、やむをえないでしょう。」
ラビン イスラエル首相
「でもねえ。うちの国の連中がこれ聞いたら怒るよ。こんな妥協許さないってね。僕も命が危なくなる。」
クリントン アメリカ大統領
「あくまで自治権を与えるだけだからさ。心配ないって。」
ラビン イスラエル首相
「仕方ない。うちらも平和に暮らしたいからね。やってみよう。その代わり、常に監視はしてるからね。何か不穏な動きがあったらすぐに叩くよ。徹底的にやるつもりだからその覚悟はしてもらわないと」
アラファト PLO代表
「ありがとう。恩に着るよ」

こんな感じでオスロ合意に至ったんじゃないのかな?でもご存知の通り、うまくいくはずもなかった。ラビンは心配した通り、自国民の過激派に暗殺されてしまった。イスラエルにもこの合意に異を唱えるものが一杯いるのだ。

イスラエルからすれば、パレスチナにかなりの譲歩をしてやったつもりでいたと思うよ。その時点でガザも西岸地区も事実上支配していたわけで、勝利は確定していたのだ。パレスチナ人をすぐに追い出せる状況にあったんだよね。でも他のアラブ国からすればパレスチナ難民が流れてきても困るので、なんとかその場に留まって欲しかった。そこでイスラエルの親友、アメリカの登場だ。ここでアラブ人に恩義を売っておくのはアメリカにとっても悪くない話。結局イスラエルは親友の顔を立てて、仕方なくここは一度折れて上げたのだ。自治権を与えてやったかわりに、監視体勢を厳しくすることで、自国民の批判を抑えようと努めた。もしこの試みが失敗したら、政府は転覆しかねないからね。それは必死だったんじゃないかな?
一方。パレスチナは感謝すべきイスラエルに対し、憎しみを増すばかり。やがてPLO自治も腐敗が横行する事態となり、イスラム原理主義の流れを汲んだハマスガザ地区に出現する。彼らは自分の生活を面倒見てくれる上に、にっくきイスラエルを殲滅しようと掲げている。パレスチナ人にとって、彼らはヒーローであり、救世主に映ったに違いない。
僕は感謝すべきと書いたけど、あの時点では追い出されなかっただけマシと考えるしかない状況だったはず。イスラエルの譲歩をいいことに、そういう夢想を抱くには時期が早過ぎたとしか言いようがない。だって勝ち目のない戦争になるのは目に見えているからだ。イスラエルは2000年の時を経て,闘う力をつけてパレスチナの土地に戻ってきたのだ。敵うわけないでしょ?
「お前らに任せたらこのザマだよ。あの時の約束忘れてないだろうな」この事態をイスラエルが黙って見ているわけにはいかないでしょう?イスラム原理主義者の台頭は、イスラエルにとっては脅威だ。原理主義ってのはタチが悪い。要は妥協を許さない人達よ。厳格に戒律を守り、目的のためには手段を選ばない連中だからね。こんな連中を放っておくわけにはいかないのだ。
ハマスの宣伝ビデオ?
ハマスは自分の力を過信したのか、イスラエルに対し。自爆テロ、ロケット弾攻撃とやりたい放題。
イスラエル政府に国民から非難の声が上がる。「このまま黙ってるつもりなのか?なんとかしろ!」支持率の下がる中、政府はとりあえず、ガザとイスラエルの間に壁を造った。これのおかげでガザからハマスは出れなくなって、自爆テロはなくなった。でもロケット弾攻撃はやまない。更に彼らは壁越しに反撃をすると同時に、水や電気の供給を止め、兵糧攻めに遭わせた。世界は停戦を呼びかける。言われる通りにしたが、ハマスは攻撃をやめない。その頃、アメリカでオバマが勝ったというニュースが流れる。「こうなったら今しかないぞ。ブッシュ政権なら、俺たちが何をやっても手出しはしないだろう。でもオバマになったらわかんないぞ。奴が大統領に就任する前に、ハマスを壊滅させるしかない。どんな手を使ってでも目にもの言わせてやる。約束を破ったのはお前達だ!」
イスラエルはとうとうガザ侵攻を開始した。
ガザの市民は生きるという事が大事ならば、ハマスと手を組むべきではなかった。実際、市民の中にはハマスを支持していないと声をあげる人もいるらしい。生きる事より民族の誇りを大事にするなら、こうなることは覚悟しないといけなかった。ガザは死を選んだとしか思えない。
イスラエルハマスが殲滅するまで、徹底的にやるだろう。それまで彼らはかなりの譲歩をしてきたのだ。そして我慢の限界を超えたのだ。ハマスの存在が国民に危機をもたらしている以上、政府としてはやるざるをえないのだ。実際、国民の90%以上がこの攻撃を支持しているという。ここでヒューマニズムを持ち出しても彼らには届かない。パレスチナ人がこれを通し、更に憎しみを抱くであろう事は重々承知の上だ。今そこにある危機を回避することが重要課題なのだ。イスラエルの力を徹底的に見せる事で、抵抗する気力・その数を減らす事さえできればいいのだ。
イスラエルの覚悟を前に、世界は何もできずにいる。というか黙認している雰囲気もある。だってハマスの存在は近隣のアラブ諸国にとっても脅威なのだ。できればイスラエルに葬ってほしいと思っている国もあるに違いない。いろんな思惑が交差する中、ガザの市民は今も殺され続けている。今日はこれまで。